読み聞かせの絵本は
内容もさることながら 一番、
リーズナブルな美術品だと私は思っています。
そして絵本の内容ですが
多くの絵本というのは
俳句や短歌のような
そんな意味合いがピッタリに思うのです。
それは短ければ短いほど
想像力を働かせて読むと
味わい深いのです。
Contents
読み聞かせの4つの目的と喰わず嫌いはダメ
絵やイラストに関して
小さい子どもというのは先入観を全く持っていません。
見たままを受け入れて
自分の中に落とし込む子もいれば
そうでない子もいます。
どちらにしても
一番最初に接触した絵に関して
好きでも嫌いでもないのです。
よく、Amazonのレビューで目にするのが
子どもが絵が嫌いとか
子どもが苦手そうな絵だとか・・・
いやいや・・・誰が決めたの?それ?
子どもが怖がったって言うのであれば
その絵本の目的は達成されているのです。
ちょっと不気味に、ちょっと怖い感じに
子どもの目に映ったわけですから・・・
そのような感情を引き出すことができることがすごいのです。
でもですね。
子どもが怖がった・・・だからと言って
その絵本をお蔵入りさせるのはどうなんでしょう?
これって親御さんの先入観だと思うのです。
きっと、親御さんも苦手な絵なのでしょう。
抽象度が高かったり
親御さんが好きな絵のタッチでなかったり
私は絵本の目的、読み聞かせの目的は
4つあると思います。
・人生経験の乏しい子どもが疑似体験できる
・物語を楽しみながら知識を蓄積していく
・短い文章の中に秘められている真実を読み解く
・芸術作品として絵本を愛でる
『くまさぶろう』のイラスト
今日は『くまさぶろう』を解説していきます。
『くまさぶろう』
もり ひさし / ユノセイイチ
こぐま社 1978年
まず、気になる絵から・・・
面白いタッチの絵が大型本から
溢れんばかりに問いかけます。
色鉛筆、クレヨン、
極細のピグマペンのような線描に
まるで塗り絵になっていないはみ出した色鉛筆・・・
イエローをふんだんに使い
淡いタッチの絵で物語が進みます。
『くまさぶろう』ってだれ?
主人公の『くまさぶろう』は
動物の名前かと思われますが
実は人間でして
それも見るからにイケていないおっさんだから笑えます。
ルパンやねずみ小僧のようにヒーローがかっていない
ただのイケてないおっさんなんです。
見るからにスーツもヨレヨレで
線描と色鉛筆のはみ出し感が
くまさぶろうがイケていない感出しています。
盗みの名人『くまさぶろう』
しかし、くまさぶろうは格好は
イケていないですが、世界に1人の盗みの名人です。
それはなぜかと言うと
人の気持ちを盗むことができるからなんです。
物語の始まりは
くまさぶろうがまだ、駆け出しの頃で
まだ人の気持ちを盗むことができない時になります。
当時の彼が盗むものは
また、どうでもいい、しょぼいものばかり!!
おじさんの傘だったり
子どもが食べようとしたコロッケだったり
まあ、しょぼい!
でも、あっという間に盗むからみんなが気付かないわけです。
おまけに盗まれても実害がないようなものばかりです。
この時、くまさぶろうの感情は読み解くことができません。
淡々と人からものを盗んでいる感じです。
『くまさぶろう』が盗むもの
そのうち、
くまさぶろうはどんどん盗みが上手くなって
盗むものの大きさを変えて盗みを始めます。
例えば
象を小さくして盗んだり・・・
今度はその象が元に戻っておうちが壊れたり・・・
そして、盗みの腕はどんどん上がり
お腹がいっぱいだと言う人の
満腹感を盗むことができるようにもなります。
定住する家がないくまさぶろうにしたら
食べ物を食べていなくとも
満腹感を盗むことで
ご飯を食べなくても平気かもしれません。
この力はすごいぞ!と思いきや
くまさぶろうは
その力を違う方法に使い始めます。
それは
痛い、悲しい、寂しいなどの負の感情を子どもから取るのです。
なんで、せっかくの力を
盗んだ自分が痛くなったり、悲しくなったりする事に使うんだろう?
バカみたいだと思うのですが・・・
いじめられているたっちゃんの情けない気持ちを盗んだ時に
くまさぶろうの感情が初めて表現されます。
それまで、全くくまさぶろうの感情が読み取れる部分がなかったのに
ここでくまさぶろうの感情を表現しています。
身代わりに情けない気持ちを受け継いだくまさぶろう
でもくまさぶろうから負の感情を盗まれたたっちゃんは
元気いっぱい笑顔になります。
そんなたっちゃんを見たくまさぶろうも
さっきまで負の感情で胸がちぎれそうだったのに
嬉しくなるのです。
人の役に立つ事は時には
嫌な事も引き受けなければいけません。
大変な思いもするかもしれません。
しかし、何よりもその人がハッピーになれば
自分もハッピーになれるわけです。
セコイ、盗みをしている頃や
満腹感を盗んでいた時のくまさぶろうの感情はほとんど表現されていません。
要するに淡々とタスクをこなしている感じなのですが
たっちゃんのお役に立った時に
初めてくまさぶろうの嬉しい感情が出てきます。
そして、くまさぶろうも満たされて嬉しいんだな〜ってわかるのです。
子どもが『くまさぶろう』に会いたい理由
奥深い絵本で、大人が読んでも不思議な感覚があります。
不思議と1歳半くらいから
読んで欲しいとせがむ子もいます。
絵本は3、4歳くらいから読み聞かせるのがいいでしょう。
この年代になってくると家庭以外のコミュニティができてきます。
お友だちも増えて、その分、
子どもなりに悩むことがあるかもしれません。
感情が芽生え始めた頃の子は
悲しい気持ちやなさけないみじめな気持ちを
持ち去ってくれる、くまさぶろうのようなヒーローに
会いたいのです。
最後の
『もしかしたら、
あなたのうちの すぐ近くまで来ているかもしれませんね』
と言う一文で
子どもたちの期待は益々膨らみます。
なんだか、くまさぶろうが近くにいるような気がするからです。
子どもも小さいながら日々揉まれて
色んな感情で生きているのです。
この絵本を読みながら
お互いの盗んでもらいたい気持ちを話し合うのもいいかもしれません。
人のお役にたつ人生
この絵本を読んでいると
色々なことが 頭を巡ります。
このような不思議な感じのお話は
読み手によって捉え方がそれぞれ違います。
1歳半の子は単純にくまさぶろうに会いたいだけかもしれないし
3歳、4歳の子は
もしかしたらお友だちとケンカしたかもしれません。
それかお母様に叱られたのかもしれません。
それぞれの感じ方はありますが
この絵本のメッセージとしては
『いくら欲しいものを手に入れても
結局、満足しないよ。』って事だと思うのです。
人の負の感情を盗むことで
人の心を満たしてあげているくまさぶろうは
自分も負の感情をもらってしまうわけですが
実のところは嬉しいのです。
それは人の役に立っているからなんですね。
人は、誰かのお役に立つ事で初めて喜びや満足を得るのです。
確かに大変かもしれませんが
あえて、そこに果敢に挑戦する事こそが
結果、自分を満足させて喜びになるのだと
この本はそんな事を伝えたいのではないかと考えます。
小さい子どもに読み聞かせる時も
『人の役に立ち、
多くの人に喜んでもらえるような人生を歩んで欲しい。』
と思いながら読んであげて欲しいですね。
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